「調整区域の空き家は売れない」は本当?解体費を払う前に確認したい5つのこと
- 更新日:2026.11.02
相続した実家が「市街化調整区域」にあると分かり、戸惑っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。「調整区域の空き家は売れないと聞いたけれど、本当だろうか」「不動産会社に売りにくいと言われてしまった」「いっそ解体してしまえば売れるのだろうか」と、先行きに不安を感じている方も少なくありません。
市街化調整区域にある空き家でも、「売れない」と決まっているわけではありません。売却すること自体が一律に禁止されているわけではないからです。ただし、買主がその家に住めるかどうか、建て替えや用途変更(住宅から店舗や賃貸に使い方を変えること)ができるかどうかは、建物が建てられた経緯や許可の内容、そして自治体の基準によって変わってきます。
そこでこの記事では、制度の細かな説明よりも、「所有者の方が、何をどの順番で確認していけばよいか」を中心にお伝えします。解体や値下げを決める前に、所在地と建物の条件を整理し、いくつかの売却方法を落ち着いて比べるための材料としてお役立てください。
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市街化調整区域の空き家は本当に売れない?結論と確認する順番
結論からお伝えすると、売れるかどうかは「調整区域だから」で決まるのではなく、「その建物がどのような経緯で建てられ、今後どのように使えるか」で決まります。同じ調整区域の空き家でも、買主が自由に住める建物もあれば、使える人が限られている建物もあるためです。
確認していく順番としては、次の5つが基本になります。上から順に進めていくと、抜け漏れなく状況を整理できます。
神戸市でも、調整区域の土地や建物を売却(賃貸)したり購入したりする際には、その建築物がどのような経緯で建てられたのかを調べ、適法であること、そして使用者が限定されていないことを確認するよう案内しています。
出典:神戸市「市街化調整区域での開発(建築)許可に関するよくある質問」(2026年8月18日更新)「調整区域だから売れない」と決めつけてしまう前に、まずはこの順番で状況を整理していきましょう。
そもそも市街化調整区域とは?所有者の方が押さえたい基本
市街化調整区域とは、都市計画法において「市街化を抑制すべき区域」とされている区域のことです。住宅地や商業地がむやみに広がらないよう、農地や自然環境を守る目的で、建物の建築などが制限されています。
相模原市でも、調整区域は建物の建築が制限されている区域であり、都市計画法に適合する建築物以外は建てることができないと案内しています。
出典:相模原市「Q3 市街化調整区域には、どのような建築物が建てられますか。」(2023年7月12日更新)調整区域の仕組みを詳しく知りたい方は、市街化調整区域とは?概要と土地活用例で解説していますので、あわせてご覧ください。この記事では、調整区域にある空き家を売却・処分したい所有者の方の判断に絞って、お話を進めていきます。
調整区域の空き家で、売却の壁になりやすい3つのポイント
調整区域の空き家を検討する買主の方が気にされるのは、建物の古さよりも、「自分がその家を使えるのかどうか」という点です。所有者の方があらかじめ把握しておきたいポイントは、次の3つです。
①建物が適法に建てられたものか
調整区域では、建物を建てるときや用途を変えるときに、都市計画法に基づく手続きが必要になります。本来は許可が必要だったにもかかわらず、手続きをしていない建物については、是正を求められることがあります。
神戸市では、許可なく建築した場合は自らの責任で是正する必要があり、是正されないときは取り壊しなどの命令を受けたり、罰則が科されたりすることがあると案内しています。
古い実家の場合、建築当時の書類が残っていないことも珍しくありません。書類がないからといって、直ちに違法となるわけではありません。ただ、買主や金融機関が確認を求める可能性がありますので、早めに自治体へ建築の経緯を確認しておくと安心です。
②使える人が限定された建物ではないか
適法に建てられた建物であっても、特定の人だけが使えるものとして許可された建物があります。たとえば、農家住宅や、世帯分離(分家)のための住宅などです。このような建物では、使う人を変えるために、自治体の手続き(使用者制限の解除など)が必要になる場合があります。
神戸市のQ&Aでも、適法に建築されたものであっても特定の人のみが使用できる建築物があり、使用者を変更するには解除の手続きが必要になると説明されています。
相続した実家が、先代の方のために許可された住宅だった場合は、そのまま第三者に売却できるとは限りません。許可の内容を自治体で確認することが、売却方法を考える出発点になります。
③買主が建て替え・用途変更できるか
買主の方が「古いので建て替えたい」「賃貸にしたい」「店舗にしたい」と考えたとき、調整区域では、建て替えや用途変更に許可が必要になる場合があります。一方で、既存の建物が適法であり、敷地や用途を変えないなど一定の要件を満たしていれば、許可なく建て替えや増改築ができる自治体もあります。
ただし、敷地を広げたり分けたりして建て替える場合は、原則として制限がかかるなど、条件は自治体ごとに細かく異なります。
つまり、買主の方が使える範囲が広い物件ほど売却しやすく、範囲が狭い物件ほど買主が限られやすい、という関係になります。建物の経緯ごとに、売却時の確認ポイントを整理すると次のとおりです。
※この表は、自治体の案内をもとに、当記事で確認の観点を整理したものです。実際の扱いは、自治体や物件によって異なります。ご自身の実家がどのタイプに当たるのかは、所在地の自治体と、調整区域の物件に慣れた不動産会社の両方に聞いてみると、判断しやすくなります。
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売却前に確認したい5つのステップ
ここからは、先ほどの5つの順番を、一つずつ具体的に見ていきます。
1.所在地が調整区域かどうかを確認する
はじめに、実家が市街化調整区域にあるのかを確認しましょう。市区町村のウェブサイトにある都市計画情報や、都市計画課などの担当窓口で調べることができます。神戸市のように、都市計画情報を閲覧できるページを用意している自治体もあります。
固定資産税の納税通知書や登記事項証明書に載っている所在地(地番)を手元に用意しておくと、窓口でもスムーズに伝えられます。
2.建物の建築の経緯と許可内容を自治体に確認する
調整区域だと分かったら、その建物がどのような経緯で建てられたのかを自治体に確認します。相談の際は、次のような資料があると話が進みやすくなります。
- 登記事項証明書(建物・土地)
- 固定資産税の納税通知書
- 建築確認や開発・建築許可に関する書類(あれば)
- 建物の図面や、過去の増改築が分かる資料(あれば)
書類がなくても、自治体で記録を確認してもらえます。窓口では「相続した実家で、書類が残っていない」と伝えれば大丈夫です。
3.買主の居住・建て替え・用途変更の可否を確認する
建物の経緯が分かったら、「第三者が購入して住めるのか」「建て替えや増改築ができるのか」「賃貸や用途変更ができるのか」を確認します。自治体の担当課の回答に加えて、実際に売却を担当する不動産会社にも、買主の見つけやすさを聞いておくと、より現実的な見通しが立てられます。
なお、国土交通省は、調整区域にある既存の建物について、昔からある集落を維持するための賃貸住宅や、観光のための宿泊・飲食施設などへ使い方を変える場合に、許可を柔軟に運用するよう、自治体へ助言しています。ただし、これは考え方を示したものであり、個々の物件の許可をお約束するものではありません。実際の許可は、自治体が個別に判断します。
4.解体を決める前に、建物付きと解体後の案を比べる
「古い家だから、解体して更地にすれば売りやすくなるはず」と考える方は多くいらっしゃいます。しかし調整区域では、建物があることで認められていた建て替えの扱いが、解体によって変わる可能性があります。解体後に建物があったものとして扱う期間や、再建築の条件は自治体によって異なり、期間を過ぎると新しい家を建てられなくなることもあるためです。
解体費をお支払いしたあとで「買主が建築できない土地だった」と分かると、取り返しがつきません。詳しくは、次の項目でご説明します。
5.条件を整理して、提案を比べる
調整区域の物件は、会社ごとに得意な地域や物件の種類、買取か仲介かといった進め方が異なり、提案の中身も変わってきます。所在地、分かる範囲の建物の経緯、希望する時期を整理したうえで、複数社の提案を見比べると、現実的な売却方法が見えてきます。
「解体すれば売りやすい」とは限らない理由
調整区域の空き家を前にして、解体を考える方は少なくありません。ただ、解体は一度行うと元に戻せませんので、次の点を確認してから判断することが大切です。
更地にしても、買主が家を建てられるとは限らない
調整区域では、新しく建物を建てることが原則として制限されています。既存の建物が適法に建っていることを前提に建て替えが認められる自治体では、建物がなくなることで、その前提が崩れてしまう可能性があります。
空き家を解体したあとも、一定の期間は建物があるものとして扱う自治体がありますが、その期間は自治体ごとに異なります。解体の前に、「解体した場合、同じ場所に建て替えができるのか、できるとすればいつまでか」を自治体に確認しておきましょう。
固定資産税や管理の負担も変わる
住宅が建っている土地には、固定資産税が軽くなる「住宅用地の特例」が適用されていることがあります。建物を解体すると、この特例の対象外となり、土地の税負担が変わる場合があります。解体費に加えて、売却までの税金や草刈りなどの管理費も含めて、手元に残る金額を比べてみましょう。
建物が傾いている、雨漏りがあるなど、傷みが大きい空き家の売却については、雨漏りする空き家は直さず売れる?や傾いた空き家は直してから売る?も参考になります。
解体費用の目安は、空き家の解体費用はいくら?木造30坪の費用の目安で確認できます。そのうえで、建物付きのまま売る場合(仲介・買取)と、解体して売る場合の見込みを、同じ条件で並べておくと違いが見えてきます。次の項目で、その比べ方をご紹介します。
調整区域の空き家を手放す方法|仲介・買取・解体後売却の比べ方
調整区域の空き家を手放す方法には、いくつかの選択肢があります。物件の条件と、いつまでに手放したいかというご希望に合わせて、見比べていきます。実家全体の手放し方は、実家じまいの手順と費用で整理しています。
買取は、条件が合えば売却の時期を決めやすい一方で、一般に仲介よりも価格が低くなる傾向があります。価格だけでなく、売却までの維持費や引渡し条件も含めた手取りで比べることが大切です。
佐賀市では、調整区域にある空き家について、売却・賃貸・管理・解体などの相談窓口や、空き家等情報登録制度、解体費・利活用調査の助成を案内しています。お住まいの自治体にも、同じような窓口や制度がないか、確認してみるとよいでしょう。
調整区域の空き家は、物件ごとに条件が異なります。所在地と建物の状況を整理したうえで、複数の売却方法を並べてみると、判断しやすくなります。
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相談前にそろえたい情報と、相談先
調整区域の空き家は、最初にお伝えする情報が多いほど、的確な提案を受けやすくなります。分かる範囲で結構ですので、次の内容をまとめておきましょう。
- 所在地(地番)と、調整区域かどうか
- 建物の築年数、構造、増改築の有無
- 建築の経緯が分かる書類(許可書、建築確認など)の有無
- 農家住宅・分家住宅など、使う人に制限がある可能性
- 相続登記が済んでいるか、名義人は誰か
- 家財の量、建物の傷み、敷地が道路に接している状況
- 希望する売却の時期と、解体に対するお考え
相続登記がまだの場合や、名義が複数人にまたがっている場合は、売却の前に整える手続きがあります。共有名義の場合は、共有名義の空き家を売るには?必要な同意と進め方もご覧ください。
相談先は、目的に応じて使い分けると、話が早く進みます。
なお、相続した空き家を売却するときの税金(3,000万円特別控除など)は、適用の条件が細かく決められています。調整区域にある空き家でも制度の対象になるかどうかは、物件の状況によって異なりますので、税務署や税理士にご確認ください。
調整区域の空き家売却、よく聞かれる6つの疑問に答えます
市街化調整区域の空き家は、本当に売れないのですか?
売却そのものが一律に禁止されているわけではありません。ただし、買主がその家に住めるか、建て替えや用途変更ができるかは、建物の建築の経緯や許可の内容、自治体の基準によって変わります。そのため、買主が限られる場合があり、売却前の確認が大切です。
解体して更地にすれば、売りやすくなりますか?
必ずしもそうとは限りません。調整区域では、建物があることを前提に建て替えが認められる自治体もあり、解体によって再建築の条件が変わる可能性があります。解体費をかける前に、自治体に再建築の可否と期限を確認し、建物付きの査定とも比べてみましょう。
自分の実家が調整区域かどうかは、どうやって調べますか?
市区町村のウェブサイトにある都市計画情報で確認できます。分かりにくい場合は、都市計画課などの担当窓口に、所在地(地番)を伝えて問い合わせてみましょう。固定資産税の納税通知書や登記事項証明書があると、所在地を正確に伝えられます。
農家住宅や分家住宅だった場合は、売れませんか?
売れないとは限りませんが、使う人が限られている建物では、買主の方が住むために自治体の手続きが必要になる場合があります。許可の内容は物件ごとに異なりますので、自治体に確認したうえで、不動産会社にも相談してみてください。
建築当時の書類が残っていない場合は、どうすればよいですか?
書類がなくても、自治体に建築の経緯や許可の記録が残っていないかを相談できます。分かる範囲で、登記事項証明書や納税通知書、過去の工事の資料などを持参すると、確認が進みやすくなります。
調整区域の空き家でも、買取してもらえますか?
条件が合えば、買取に対応する会社はあります。買取の対象とする地域や物件の種類、条件は会社ごとに異なりますので、所在地や建物の状況を整理して、買取の条件を確認しましょう。
まとめ|「売れない」と決めつける前に、所在地と建物の条件を確認しよう
市街化調整区域の空き家は、「売れない」と決まっているわけではありません。ただし、建物が適法に建てられたか、使う人に制限がないか、買主が居住・建て替え・用途変更できるかによって、売りやすさや売却の方法が変わります。
「調整区域でも必ず売れる」「解体すれば売りやすくなる」と考えるのではなく、所在地と建物の条件を確認したうえで、建物付きの仲介・買取、解体後の売却などを比べることが大切です。解体費をかける前に、自治体への確認と、複数社の提案をそろえておきましょう。
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「調整区域だから」と一括りにせず、まずはご自身の実家の条件を整理するところから始めてみましょう。そのうえで、仲介・買取・解体後の売却などを比べていくと、納得できる手放し方が見えてきます。
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